2016年の展覧会

キース・ヘリング:グローイングー進化するフォルムー

会期: 2016年4月24日(日)~2017 年1月31日(火)

協力:キースヘリング財団

後援:アメリカ合衆国大使館

山梨県、山梨県教育委員会

北杜市、北杜市教育委員会

本展覧会はキース・ヘリングの活動の軌跡を辿りながら、最期まで拡張と進化を続けたヘリング芸術に焦点を当て、細部を探っていきます。1978 年にペンシルヴァニアからニューヨークに移り、名門美術学校スクール・オブ・ヴィジュアル・アーツに奨学生として入学。人種と文化の坩堝の大都市で、ヘリングは自身のアイデンティティーとアートを探求していくことになりました。デュビュッフェ、ピエール・アレシンスキー、クリストなどから影響を受け、ドローイングからストリート(パブリック)にもその活動は広がりました。80 年にはヘリングを一躍有名にした、地下鉄構内の広告板にチョークで描く《サブウェイ・ドローイング》をはじめ、グラフィティアートが集結したタイムズ・スクエア・ショー、クラブ57など画廊以外のスペースでも展覧会を企画。のちにヘリングのイコンとなった《ラディアント・ベイビー》はここで誕生しています。その後、国際展にも次々に出展し瞬く間に評価を得て、83年には初来日し日本にも大旋風を巻き起こしました。 1986 年以降、ヘリングの作品を特徴づける黒の太いライン、繰り返し描かれるパターンや簡易化されたフイギュアが変容を遂げていきます。87 年ドイツの遊園地のプロジェクト《ルナルナ》はアートを超えたフォルムの拡張となりました。さらにエイズと診断された1988 年は、ヘリングにとって最大の転機となった年です。膨大な量の作品が制作されたましたが、版画作品の老舗画廊マーティン・ローレンスから《グローイング》シリーズが出版されました。同年の宗教への懐疑、生命のカオスを表現した詩人ウィリアム・S・バロウズとの共作《アポカリプス》とは根本的に異なり、優雅な絵画のスタイルが完成しています。左右に分裂するシンメトリーな人物、繊細な輪郭。そして画面全体は民族(トライバル)言語のようなグリフ(字体)が形作られています。これらはコンクリートの彫刻作品《トーテム》(1989 年)にも継承され、5 回目となるトニー・シャフラジ画廊での個展のために制作された、三角形のキャンバス作品《無題(トライアングル)1988年8 月15 日》に結実したといえましょう。色彩の対比、構図、空間が計算されたように描かれ、それまでのヘリング芸術を代表するオールオーヴァーな作品とは異なり、画面は幾何学のフォルムの中で完結しています。そして、異なるフォルムが独立したものとして描写された本作の内に秘められたストーリーは、時空を超えて拡張し続けています。

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