日本がバブル経済で沸いていた80年代のニューヨークは、依然として治安が悪く、生活水準は低迷していました。
全体的には暗いイメージがあり、人種の摩擦やゲイ・レズビアンの性差別問題も浮上し混沌とした空気が漂っていましたが、同時に独特なニューヨーク・カルチャーが形成された時代です。
街ではブレイク・ダンスやグラフィティなどのストリート・アートが全盛で、ウォーホルやバスキア、マドンナが台頭していました。
キース・へリングは78年に、アーティストを目指してニューヨークにやってきましたが、まだ20歳になったばかりの若者が、街の発するエネルギーに感化されたのは言うまでもありません。
「ここではすべてが常に変化している。異なる感覚、感動、四方八方に伸びる力(=エネルギー)のベクトルが自分の周りで混合されては、解体され続けているのだ」-1978年10月14日。
「バイブルの無い教会vol.Ⅱ-ポップ・神話・ワンダフルワールド」ではキース・へリング芸術から、資本主義下における消費社会から生まれたポップカルチャー(芸術と商業主義)、社会概念の神話化(偶像化)、個の解放と自由(未来への希望)に注目します。
展示は、へリングの縄文文様を彷彿とさせるドローイングが天井まで一杯に再現された《闇へのスロープ》から始まり、ニューヨークの地下鉄で、使用されていない広告板に白いチョークで描く「サブウェイ・ドローイング」のある《考える部屋》、ヘリングの象徴である「イコン」5点と、アンディ・ウォーホルとの貴重なコラボ作品「アンディ・マウス」全4点が初めて揃って公開される《偶像の空間》、大型彫刻作品郡とウィリアム・バロウズとのコラボ作品「アポカリプス」、新収蔵作品「メデューサ」を展示した《希望の部屋》、そして当館学芸員により多角的な解釈でヘリングの作品をセレクトし、会期中シリーズで展示する、《自由の回廊》へと続きます。
-バイブルの無い教会 vol.Ⅱ ポップ・神話・ワンダフルワールド-
会期:2012年3月17日〜2013年1月7日
協力:
キースヘリング財団
Nicholas Kirkwood Studio
後援:
山梨県、山梨県教育委員会
北杜市、北杜市教育委員会
株式会社メディカル・プリンシプル社