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中村キース・へリング美術館は、ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動するアーティスト 大山エンリコイサムの個展「VIRAL ヴァイラル」を開催いたします。
大山は1983年イタリア人の父と日本人の母のもとに東京で生まれました。エアロゾル塗料で都市の地下鉄や壁に名前をかくエアロゾル・ライティング(グラフィティ)の文化に影響を受け、2012年より渡米。大山のアートは、ライティングの視覚言語から文字を取り除き、線の動きのみを抽出し、反復・拡張させた「クイックターン・ストラクチャー」というモティーフを軸としています。これまで世界各地で壁画制作や個展を開催するほか、著書『アゲインスト・リテラシー─グラフィティ文化論』(LIXIL出版、2015年)の刊行やコム・デ・ギャルソン、シュウ ウエムラとコラボレーションするなど、多角的に活動を続けています。
本展のタイトル「VIRAL ヴァイラル」について大山は「コンピュータ・ウィルスという言い方には「感染」というネガティヴな含意があるのに対し、SNSなどでいうヴァイラルは「拡散」や「急速」といった運動や速度のイメージと結びつき、さらには共有され、ポピュラーになるというポジティヴなニュアンスすら帯びています。クラウドやモバイルのコンピューティングが普及し、デジタルを取り巻く想像力の拠点が、身体を連想させるマシン=ハードウェアから、自然環境を連想させるサービスやアプリケーション、プラットフォームなどのソフトウェアに移行した現代、ヴァイラルという表現もまた、人体に侵入し危害を加える否定的なものから、(人工)自然のなかで繁殖する生命力や自己組織的な生成力といった肯定的なものにコノテーションが変化しつつあります」「ウィルスの脅威を、ヴァイラルの繁殖や拡散という力の生成に読み替え、さらにそれをヴァイタルという生命そのものの活力として捉え直すこと」と述べています。本展は大山の多岐におよぶ「クイックターン・ストラクチャー」作品のなかでも中心を担う絵画をメインに構成され、同時にモノクロームの階調やスケール、画面構成、テクスチャやレイヤリングといった技法においてバラエティに富む作風が選定さています。とくに美術館内自由の回廊に展開されるサイトスペシフィックな壁画作品は、キース・ヘリングの東京における記録写真の上に施され、本展のために制作されたハイライトになる新作です。
クイックターン・ストラクチャーは多様なメディアに展開・適応できるヴァイラルなアイコンだと作家は言います。環境や文脈が変化しても、それらと対話しつつ同一性を保つことのできる強固なアイデンディティ。持続する制作と作品の空間において、それは自らの生を生きていると本人が述べる大山のアートと、キース・ヘリングの作品群にも一貫する繁殖するドローイングの生命力が、時空を超えて融合します。
BIOGRAPHY
アーティスト・プロフィール
アーティスト。エアロゾル・ライティングのヴィジュアルを再解釈したモティーフ「クイックターン・ストラクチャー」をベースに壁画やペインティングを発表し、現代美術の領域で注目を集める。1983年東京生まれ。
https://enricoisamuoyama.net
HIGHLIGHTS
見どころ
タイトルの「FFIGURATI」は「Graffiti」(グラフィティ)とイタリア語の「figùra ti」(フィグーラティ:自身で象れ)を合わせた造語。大山の代名詞ともいえる「クイックターン・ストラクチャー/QTS」は大山作品に一貫する抽象的な「モティーフ」ですが、「FFIGURATI」は作品ごとに異なるメディウムや技法なども含む個別作品を指し、番号が振られています。#184は2017年6月にNYのジェーン・ロンバード・ギャラリーで行なわれたライブ・ペインティング作品に、スタジオでさらにQTSを加筆して完成した絵画作品です。
当館の回廊では、1983年へリングの東京神宮前での壁画制作の記録写真を壁一面にコラージュしてご紹介しています。本展では、そのフォトコラージュの上を横断するように大山による長さ14mに及ぶ巨大な壁画作品が出現いたします。
1980年代アメリカ美術を代表するアーティスト、キース・ヘリング。当館は約300点のヘリング作品を収蔵しています。本展の会期中は当館のコレクション展「Keith Haring: Humanism -博愛の芸術-」を開催中。ニューヨーク、ストリート、躍動する線。多くの共通項を持つ2人のアーティストの作品を一堂にご覧いただけます。
INSTALLATION VIEW
インスタレーションビュー
Photo by ©︎Shu Nakagawa
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関連イベント
2019年5月18日(土)
「VIRAL」展オープニングイベント
大山エンリコイサムによる作品解説およびライブペインティング
Photo by ©︎Shu Nakagawa
2019年5月25日(土)
大山エンリコイサム、飯塚珠実(中村キース・ヘリング美術館学芸員)によるギャラリーツアー
2019年11月3日(日)
第11回 中村キース・ヘリング美術館 国際児童絵画コンクール授賞式
大山エンリコイサムによるワークショップ「なまえで自分を表現してみよう」
2019年11月9日(土)
『UBIQUITOUS: Enrico Isamu Oyama』 『VIRAL: Enrico Isamu Oyama』 刊行記念トーク: 拡散・横断・身体・造形
出演:大山エンリコイサム、聞き手:中尾拓哉(美術評論家)
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