ご挨拶
私たちは夢を与えます。夢、それは実現するものです。
1987年12月28日。それは私にとってキース・ヘリングの作品との出会いの日です。
米国出張中に、NYのギャラリーで出会った「ピープルズラダー」は、それこそ漫画的で、それでいて何か私に訴えるものがありました。
この漫画的な絵 (リトグラフ)が何故こんなに値段が高いのか。そのような想いで、帰国間際まで、買うことの決心がつきませんでした。
そして帰国前日、思い切って買ったのです。
キース・ヘリングの作品、そこにはシンプルで何とも言えないヒューマニティーとエネルギーを感じました。
それから、私のキース・ヘリングのコレクションが始まりました。悩みながら、時には戦いながら、いずれも興奮して集めた作品です。
KEYFOREST 871228は、「キース・ヘリングの世界〜混沌から希望へ〜」をテーマに、キース・ヘリングのコレクションのみを展示する、世界で初めての美術館です。
日本がバブル景気に沸いていた1980年代、アメリカではインフレの激化、失業率の増加、経済の混乱とともに、大都市では治安が悪化し、犯罪の多発がクローズアップされていました。
1980年代アメリカの「光と影」を背景に、キース・ヘリングは10年余りという短い期間に精力的な創作活動を行いました。
彼は、世相を反映するかのように「未来への希望と夢」を表現しながらも、一方では「人間の持つ狂気」などを表した作品も数多く、やはり「光と影」両方の側面の作品を残しています。
それらは多くの人々の直感に訴えるものであり生命のエネルギーに満ち溢れています。
当美術館はキース・ヘリングの貴重な作品を展示することを目的としているだけではなく、彼が発したメッセージを体感していただけるよう、建築家・北川原温の設計により「光と影」を表現した空間を創出しています。
作品をご覧いただくと同時に、空間体験を通じてキースの考えたことや人生、そして彼が駆け抜けた時代について想いをめぐらせ、来館される皆さんに「希望」と「夢」というエネルギーを感受して頂きたいと考えています。
小淵沢は八ヶ岳の裾野に位置し、緑溢れる自然環境に包まれ、かつては縄文文化が隆盛を極めた場所です。また、日本で最も日照時間が長く、標高1000mの気候は、生命を育む母胎の環境と似ていると言われています。
キース・ヘリングの作品は多民族大都市であるニューヨークというひとつのカオスから生み出されたポップ・アートであり、自然や緑といった言葉とはかけ離れた作品群ですが、大都市が生み出す無数の「生」のエネルギーと、八ヶ岳の自然が宿すエネルギーや縄文時代の遺構が発する生命力に通底する力強さと純粋な感性が向き合う場として、この地が選ばれました。
エネルギーの交流の場として、そして心を開放する場として、当美術館を創造してゆきます。
中村和男
キーフォレスト 871228 館長
HIGHLIGHTS
見どころ
展示室「闇」
外光が薄れ除々に暗がりゆくスロープ、最初の展示室「闇」へと導かれます。
黒い壁、天井、床の境界は視覚で認識できず、まるで深い黒に吸い込まれていくかのような無限に広がる空間が出現します。この闇の展示空間は、外界から隔絶しキース・ヘリングの作品や思想と対する場です。
展示室「ジャイアントフレーム」
壁一面が大きな1つの額(ジャイアントフレーム)となっています。
様々な作品が展示される壁面は、それ自体が作品の集合による1つの展示物ともいえます。
また、レイアウト変更やコレクションの増加によって、変化し続ける展示体です。
主に、シルクスクリーン作品やリトグラフ作品を一堂に展示し、キース・ヘリングの圧倒的な存在感が闇の展示室を抜けた先に訪れます。
展示室「希望」
未来への夢や希望を予感させる大空間。
天井高は最も高い部分で約12mにも達します。
また、この展示空間の照明は、太陽が姿を現す日の出の照度と同じ明るさに設計されています。
夜の間をぬけ、新たな日の訪れを私たちに知らせる太陽の光、それは希望の光です。
作品は、”Two Dancing Figure”をはじめとする玩具のように楽しく大胆にそしてカラフルにカラーリングされた大型立体作品、また舞台装置”Sweet Saturday Night”などの貴重なオリジナルの大型作品を展示。大スケールの表現豊かなキース・ヘリングの作品から、希望やエネルギーを感受するような展示空間です。
展示室「希望」は、大空へと広がるスカイコートへと向かう道、「空への階段」へと続いています。
INSTALLATION VIEW
インスタレーションビュー